セルフヒーリング・ヨーガ & ヨーガ・セラピー


(1) ヨーガ・セラピー



 伝統的なヨーガの修行法と健康増進のためのヨーガ療法(ヨーガ・セラピー)は、全く別のものです。本来の伝統的なヨーガは、肉体的な訓練を積み重ねていくことによって、精神の高みに到達しようとする自己鍛錬法です。


ヨーガ・セラピーにおいては、一般の人たち(健常人・疾患を持った人たち)が、実習できるように、伝統的なヨーガの行法に改良を加えて、分かりやすく実習しやすくしたものです。


 ヨーガ・セラピーの様々な技法を実習することで、自分の体への気づきや心の働かせ方への気づきを深めていくことで、心と体の繋がりを感じていきます。自分を客観視できるようになることで、日常生活において心身の安定と健康増進がもたらされるようになってきます。

           


           [すべての欲望を捨てて執着することがなく、『私が』、『私の』という思いもなく

行為する者は、誰でもが静寂(シャンティ)の境地に達するのだ」


   (バガヴァッド・ギーター  第2章71節)





(2) ヨーガ・セラピーで考えられている健康とは



 ヨーガ・セラピーでは 肉体面だけでなく、心の面での真の健やかさを持っている状態を健康と考えています。人間は五つの鞘に包まれた存在と考えられ、私たちの体を作っているこの五つの鞘全てが、大自然の成り立ち・宇宙の成り立ちと調和状態にあることを真の健康状態と考えています。この五つの鞘はお互いに影響しあっています。                                                 (人間五蔵説)


 *人間五蔵説  食物鞘(身体の層)

            生気鞘(呼吸とエネルギーの層)

            意思鞘(知覚作用と感情の情報伝達作用の層)

            理智鞘(思考・感情・知性の働かせ方を司る層)

            歓喜鞘(記憶の貯蔵庫を含む純粋意識としての真我と繋がっているとされる層)


 ヨーガ・セラピーでは本人が心の深いところに抱えている問題(物事に対してのこだわり・執着していること)に気づくことによって、あらゆる病の根本原因を取り除くものであると考えられています。


 自分の抱えている問題を客観視できるようになることで、その思いから自分を離し、感情に引きずられることなく、問題を冷静に見ることができるようになります本人の物事に対する捉え方・考え方・感情に変化が起こり、日常生活における行動の変化が起こります。この様な内面の変化は、心に抱えた原因に対して根本的な治癒に繋がっていくと考えられています。


 一般になされている医学的方法で症状を除こうとするものではありません本人の内面への気づきの深まりによって、本人自ら問題の解決を導くことによって、肉体レベルを超えた次元での治癒に繋がります。本当の意味での治癒になります。生命力が高まって、心身共に健やかになっていきます。



真の健康とは、どのような環境の中にあっても周囲に影響されることなく、

 目の前の事を淡々と行うことができる心の働かせ方ができること。




(3)何故ヨーガがストレス・マネジメント法になっているのか?


 ストレスを処理する上で、人によっていろいろな対処方法があると思います。気分転換をするために、旅行を楽しんだり、外食に出かけたり、カラオケに行ったりと様々な対処の仕方があります。一方で喫煙、飲酒、ギャンブル、薬物等に頼って、それが悪習慣化してしまい、肉体を蝕み、心まで病んでしまうこともあります。悪習慣化してしまうとなかなか抜け出せずに、それが苦しみを生み出す結果を招きかねません。


 ヨーガの実習中は、出来る限り目を閉じて、内心に意識を向けていきます。体に起こる変化や、内側の様々な反応を客観的に認識できる能力を身につけていきます。例えば、アーサナ(体位法)の実習の時は、微細な肉体の変化や筋肉の緊張と弛緩や、またその時の呼吸の変化などを客観的に見て観察していきます。自分を客観的に見るということが、自分がどの様なストレス下に置かれても、上手に自分の心と向き合って、ストレスに負けない心の強さを育てていくことが出来ます。この様に自分を客観的に見るということが、ストレス・マネジメント法の第一歩となります。


 それでは、次にヨーガの実習を通して考えられるストレスの対処法を少し列挙してみたいと思います。

*ヨーガのアーサナ(体位法)を実習することで、肉体に蓄積されたストレス(各関節の働きが硬くなる・筋肉が短縮するなど)を解消させることが出来ます。肉体の緊張と弛緩を繰り返し続けることによって、より深い次元のストレスを開放することが出来ます。アーサナのゆっくりとした身体の働きは、心の内側から生じてくる様々な思いに対抗する上で、極めて有効な働きをしてくれます。心の中の様々な問題を解決できるようになってきます。


*心身の働く速度が速すぎる状態が続くと、それがストレスを生み出し、心身の不調和となっていきます。ヨーガの実習を行うと心身の働く速度がゆったりとしたリズムに変化してきますので、少しずつ調和された状態になってきます。


*呼吸法においてもゆっくりとした規則正しい呼吸は、たとえストレスの影響を受けている状況の中にあっても心身の調和を実現させてくれます。


*ヨーガの実習を通して、自分の肉体が今どのような状態なのか、呼吸はどのような呼吸をしているのか、「自分を客観的に見る」ことを行っていきます。.肉体が緩んでリラックスを感じ、呼吸は長く、深い呼吸に変わり、呼吸の質が上質なものに変化している状態を感じることで、心もゆったりとして安心感のある状態になります。心身共にリラックスを感じ、「休んでいる」ということを深く意識することが大切です。全身が緩んで深いリラックスを感じることが出来るようになります。これらの体験が、ストレスを処理する上で極めて有効なものとなります。